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『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター(通巻152号)』(転載)

二木立

発行日2017年03月01日

出所を明示していただければ、御自由に引用・転送していただいて結構ですが、他の雑誌に発表済みの拙論全文を別の雑誌・新聞に転載することを希望される方は、事前に初出誌の編集部と私の許可を求めて下さい。無断引用・転載は固くお断りします。御笑読の上、率直な御感想・御質問・御意見、あるいは皆様がご存知の関連情報をお送りいただければ幸いです。


目次


お願い:

日本福祉大学の大学院入学式で毎年配布している「大学院『「入院』生のための論文の書き方・研究方法論等の私的推薦図書」リスト2017年度版(ver.19) を作成中です(本「ニューズレター」153号(2017年4月1日)にも転載予定)。2016~2017年に出版された本で皆様が推薦される新刊書(既刊書の新版も含む)がありましたら、3月5日(日)までに、著者名・書名・出版年と簡単な推薦理由をお知らせいただければ幸いです。

お知らせ:

第2回日本福祉大学地域包括ケア研究会公開セミナーを開催します


1. 論文:「地域力強化検討会中間とりまとめ」をどう読むか?-「新福祉ビジョン」との異同を中心に
(「深層を読む・真相を解く(60)」『日本医事新報』2017年2月4日号(4841号):20-21頁)

厚生労働省は、昨年12月26日、地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(略称「地域力強化検討会」。座長:原田正樹日本福祉大学教授」)の「中間とりまとめ~従来の福祉の地平を超えた、次のステージへ~」(以下、「中間とりまとめ」)を発表しました。

厚生労働省は、2015年9月の同省プロジェクトチーム「新福祉ビジョン」と昨年6月の閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」を踏まえ、昨年7月に「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部を設置しました。本検討会は地域共生社会の実現について具体的に検討するために、昨年10月に発足しました。厚生労働省は、「最終報告」を待たず、「中間とりまとめ」を踏まえた社会福祉法改正案を次期通常国会に提出する予定です。地域共生社会は今や、厚生労働省が「全省あげて取り組む1丁目1番地」とも言われており、「中間とりまとめ」には今後の地域共生社会を考えるヒントが少なくありません。

ただし、本稿ではそれの網羅的検討は避け、本連載(48)(4773号)で検討した「新福祉ビジョン」との異同に焦点を当てます。「新福祉ビジョン」が厚生労働省各局の代表者のみで策定されたのと対照的に、地域力強化検討会構成員(21人)の過半数は各地でまちづくりや医療・福祉のネットワークづくりを主導している実践家であり、厚生労働省の公式文書とは異なる記述や提言が含まれているからです。

地域のマイナス面にも言及

「中間とりまとめ」は「総論」と「各論」の二部構成です。「中間とりまとめ」の副題「従来の福祉の地平を超えた、次のステージへ」は、「福祉の領域を超えた地域全体が直面する課題」(1頁)を直視し、「地域の持続可能性、(中略)共生文化の創出、(中略)地域包括支援体制の構築」(8頁)を目ざすことと理解できます。「新福祉ビジョン」があくまで福祉を基本にして、それを「福祉以外の分野に拡大」(8頁)することを提起していたのに対して、「中間とりまとめ」では(地域)福祉と地域(まち)づくりが同格と位置づけられています。

私がまず注目したことは、地域を美化せず、「地域共生社会を実現していくためには、社会的孤立や社会的排除といった現実に生じうる課題を直視していくことが必要である」(3頁)等と、地域のマイナス面も繰り返し指摘していることです。ただし、それで悲観論に陥るのではなく、地域共生社会実現に「向けた努力をしていくことが、将来の地域社会、私たち一人ひとりにとって必要であるという高い理想を掲げ」(3頁)、「各論」で「我が事・丸ごと」の地域共生社会実現のための具体的課題を示しているのは大変建設的と思います。

ソーシャルワーク「機能」重視の光と影

次に注目すべきは、今後の地域共生社会を実現する上での、「ソーシャルワークの機能」の重要性を繰り返し強調していることです:「他人事を『我が事』に変えていくような働きかけをする、いわば地域にとっての『触媒』としての『ソーシャルワークの機能』が、それぞれの『住民に身近な圏域』に存在していることが必要である」(9-10頁)等。この点は、「新福祉ビジョン」が、「福祉人材」については、介護職・介護福祉士偏重で、ソーシャルワークを軽視していたのと対照的です。

さらに、「各論」の「国の役割」の項で、「ソーシャルワーカーの養成や配置等については、国家資格として現在の養成カリキュラムの見直しも含めて検討すべきである。人材の確保や定着についても、必要な措置を講ずるべきである」(18頁)と提起しているのは画期的です。この一文の前には、「『我が事・丸ごと』を実現するためには、①制度横断的な知識を有し、②アセスメントの力、③支援計画の策定・評価、④関係者の連携・調整、⑤資源開発までできるような、包括的な相談支援を担える人材育成に取り組むべきである」と書かれています(番号は私が付けました)。この人材の職種は明示していませんが、上記の一文から「ソーシャルワーカー」を含意していると読めます。

なお、上記5つの能力のうち、①~④は「新福祉ビジョン」にも書かれていましたが、⑤(資源開発)は「中間とりまとめ」で初めて書き込まれました。
ただし、「中間とりまとめ」ではソーシャルワーク機能の中核を担う社会福祉士・精神保健福祉士についての言及はまったくありません。逆に、上述した10頁の「ソーシャルワーク機能」重視の一文に続いて、「その際、自治体が主導して単に有資格者を『配置する』という形ではなく、また特定の福祉組織に限定するのではなく(以下略)」という、「ダメだし」の強い一文が加えられています。これは、ソーシャルワーク「機能」と社会福祉士・精神保健福祉士「資格」を峻別する厚生労働省の強い意志を感じさせます。

私もソーシャルワークの機能と資格は同一ではなく、前者は、介護福祉士や保育士、保健師、さらには特に資格を有しない地域開発ワーカー等によっても担われるべきだが、その中核は社会福祉士・精神保健福祉士が担うべきと思います。それだけに、福祉系大学等には、上記5つの能力を持った有能な社会福祉士・精神保健福祉士を大量に養成する責務があると感じました。

社会福祉法改正にも踏み込む

「中間とりまとめ」は、「新福祉ビジョン」では明示されていなかった社会福祉法改正の必要性も提起しています。その中核は、「地域福祉計画」に関わる改正で、①策定が任意であるものを義務化すること、②単に策定するだけではなくPDCAの手続きを踏むことを明確に規定すること、および③多分野の計画を横断的総合的に統合する、いわば「上位計画」として位置づけることです(14-15頁)。もう一つは、社会福祉法第4条で、「福祉サービスを必要とする地域住民」に限定されている支援の対象の拡大で、「従来の福祉サービスの枠組みを超える支援が必要な人も含まれるべき」としています(15頁)。

私は、支援対象の拡大は「新福祉ビジョン」で提起された「全世代・全対象型地域包括支援」とも合致し、実現の可能性が高いと思います。それに対して、地域福祉計画の策定義務化は、職員不足に悩む町村の反対が強く、しかも法的にも地方分権の理念に抵触する危険があるので実現は困難で、ギリギリ実現可能なのは「努力義務化」だと予測します。

地域包括ケアと公的財源に触れていない

最後に、「中間とりまとめ」で残念なことを2つ指摘します。

1つは、「地域包括ケア」についてまったく触れていないことです。この点は、「新福祉ビジョン」が、「高齢者に対する地域包括ケアシステムや生活困窮者に対する自立支援制度といった包括的な支援システム」を提起していたのと対照的です。福祉と医療との連携についてもほとんど触れていません。

もう1つは、地域共生社会実現に不可欠な公的財源についてほとんど触れていないことです。これは「新福祉ビジョン」でも同じです。「中間とりまとめ」では、それに代えて「寄附文化の醸成」を提唱し、クラウドファンディングや地域通貨等の検討を提唱しています(19頁)。これは、閣議決定「ニッポン一億総活躍プラン」で示された「寄附文化の醸成に向けた取組」の具体化と言えます。

私は「寄附文化の醸成」には大賛成であり、個人的にも長年実行しています。しかし、それにより公的財源の不足を補うのは困難であり、このままでは、せっかく「中間とりまとめ」が提起した取り組みの多くが絵に描いた餅に終わってしまうと危惧しています。それだけに、安倍政権が「社会保障の機能強化」のために不可欠な消費税率の10%への引き上げを2度も延期したことの罪は重いと言えます。

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2.最近発表された興味ある医療経済・政策学関連の英語論文(通算132回)

(2016年分その12:4論文)

○アメリカの1996-2013年の対人医療・公衆衛生費用
Dieleman JL, et al: US spending on personal health care and public health, 1996-2013. JAMA 316(24):2627-2646,2016.[量的研究]

アメリカの医療費は増加し続け、2014年にはGDPの17%を超えた。この規模と伸び率にもかかわらず、各疾病の年齢別・時系列の費用についてはほとんど知られていない。本研究の目的はアメリカの対人医療・公衆衛生費用を、傷病、年齢・性、および診療種類別に体系的かつ包括的に推計することである。政府予算、保険給付支払い、医療施設調査、家計調査および政府の公式資料等(合計183)を収集・組み合わせて、1996~2013年の155傷病区分別の費用を推計した(悪性新生物は29に細分した)。

1996~2013年の155傷病区分の対人医療費総額は30.1兆ドルであった。2013年には最も多額の傷病区分は糖尿病の1014億ドルで、その57.6%が医薬品、23.5%が外来であった。第2位は虚血性心疾患(881億ドル)、第3位は腰痛・頸部痛(876億ドル)であった。医療費が最も多い傷病区分は、年齢、性、診療種類及び調査年により異なっていた。1996~2013年に155区分中143区分で対人医療費が増加していた。18年間にもっとも医療費が増加したのは腰痛・頸部痛(644億ドル)と糖尿病(572億ドル)であり、年平均増加率が一番高かったのは救急医療(6.4%)と外来薬剤費(5.6%)であった。それに対して、入院医療費とナーシングホーム費の年平均増加率はそれぞれ2.8%、2.5%にとどまっていた。

二木コメント-過去18年間のアメリカの対人医療費を多面的に分析した20頁の長大論文です。傷病区分は日本の「国民医療費」とやや異なりますが、ある程度の日米比較も可能と思います。私自身は年齢別の1人当たり医療費に興味があったのですが、それは2639頁に図示されているだけで、数値は示されていません。

○[アメリカの]病院所有のスキルド・ナーシングホームは[独立型ナーシングホームに比べ]より良い急性期後ケアを提供しているか?
Rahman M, et al: Do hospital-owned skilled nursing facilities provide better post-acute care quality? Journal of Health Economics 50:36-46,2016.[量的研究]

新しい支払い方式の下で、患者の退院後アウトカムに対する病院の責任は増しているため、病院はスキルド・ナーシングホーム(skilled nursing facilities.以下、SNF)を建設または買収して、アウトカム・マネジメントを改善しようとする可能性がある。それにより、病院付属SNFに退院した患者のアウトカムは、独立型SNFに退院した患者より良いかとの問いが生じる。粗い比較では、病院付属のSNFに入院した患者の病院退院後180日間のメディケア利用は、独立型に比べてかなり少ない。病院付属SNFと独立型SNFへの「差別(分別)選択」(differential selection)問題を解決するために、自宅に最も近いSNFのある病院への距離と自宅に最も近いSNFのない病院との距離を比べた「差別距離」(diffrential difference)を、操作変数として用いて回帰分析を行った。その結果、病院付属SNFに転院した患者は、独立型SNFに転院した患者と比べて、病院退院後180日間のうち自宅にとどまる日数が約5日多く、SNFに入院する期間が6日短かく、メディケア費用(病院・SNF・在宅の合計)も有意に低かった。両群では、死亡率と病院再入院率に有意差はなかった。以上の結果は、病院とSNFとの垂直統合をある程度支持している。

二木コメント-2009年に病院からSNFに転院したメディケア加入者の個票データを用いた精緻な分析により、病院とナーシングホームの垂直統合(IDS.「複合体」)が退院後180日間の1人当たりメディケア総費用を節減することを示した貴重な研究です。

○[アメリカにおける]病院・医師統合が[患者の]入院選択に与える影響
Baker LC, et al: The effect of hospital/physician integration on hospital choice. Journal of Health Economics 50:1-8,2016.[量的研究]

本論文では、病院が医師診療所を所有することが、その診療所を受診した患者の入院選択に与える影響を推計する。メディケア患者の主治医、患者が受診した診療所の所有者も分かる、メディケア加入者の病院入院のデータセットを作成し、回帰分析を行った。その結果、病院の医師診療所所有は、患者が主治医の所属する病院への入院を選択する確率を劇的に増加させていた。併せて、患者は、主治医の診療所が病院所有である場合、高額で質の低い病院でも選ぶ傾向があることも明らかになった。

二木コメント-前論文が病院とナーシングホームとの統合の効果を示していたのと逆に、本論文は病院・医師統合のマイナス面(医師・患者のエイジェンシー問題の悪化) を示しています。

○[アメリカの]介護者の介護支援器機に対する支払い意思[についての全国ウェブ調査]
Schulz R, et al: Caregivers' willingness to pay for technologies to support caregiving. Gerontologist 56(5):817-829,2016.[量的研究]

インフォーマルな介護者が、被介護者が家事動作や身の回り動作をする際にモニタリングと支援を行うようにデザインされた器機に対する支払い意志を持っているか否か、持っているとしたらどのくらい支払うおうとしているかについて調査した。高齢者(512人)の介護を無報酬で行っている成人の家族介護者(18-64歳)を対象にした全国標本のウェブ調査を行った。介護者は25分で終わるウェブ調査に回答し、質問事項には介護の状況、最近日常的に用いている介護器機、特別な介護機器の使用、器機に対する一般的な態度、および被験者の家事動作(台所での食事の準備と後片づけ)や身の回り動作のモニタリングと支援をするようにデザインされた仮想的(開発途上の)器機についての態度を含んでいる。結果の解析は多重回帰分析で行った。

約20%の介護者は介護支援機器に金を支払う意思がまったくなかった。何らかの支払い意志がある介護者では、支払っても良いと考えている1月当たり平均額はモニタリング専用器機に対して50ドル、モニタリングと何らかの支援をする器機に対して70ドルであった。若い介護者(18-29歳)、アルツハイマー病の介護をしている介護者、器機使用のについて肯定的な介護者は、もっと多く支払う意思があった。ほとんどの介護者は政府又は民間保険がこれら介護者による器機費用の支払いを補助すべきと感じていた。

介護者は、介護支援器機を受容しており、それへの支払い意思もあったが、その額は月70ドル前後が上限になっていた。個人的な支払いと政府補助の組合せが、介護支援器機の開発と普及を促進する可能性がある。

二木コメント-日本では昨年、福祉用具を介護保険給付から除外することが一時検討されましたが、この調査結果は、仮にそれが実施された場合、福祉用具市場は壊滅的に縮小することを示唆しています。

(2017年分その1:3論文)

○[ドイツの]病院の質公開ではランキング結果が一致しないことを示している
Emmert M, et al: Public reporting of hospital quality shows inconsistent ranking results. Health Policy 121(1):17-26,2017.[量的研究]

アメリカで得られたエビデンスでは、病院成績表(hospital report cards)は病院を探している患者に混乱をもたらす可能性がある。しかし、ドイツの成績表間で病院ランキングは一致しているか、不一致の要因は何かについては、ほとんど知られていない。本研究の目的は、ドイツの病院成績表に基づく病院の推奨の一致の有無を調査し、不一致の原因について検討することである。ドイツでウェブ上に公開されている4つの病院成績表による、3つの手術(大腿骨置換術、膝関節置換術、経皮的冠動脈インターベンション)についての病院の推奨を比較した。2つの成績表の一致はCohen's Kappaで判定した。Fleiss's Kappaを用いて、全4成績表間の重複(overlap)を評価した。

その結果、2つの成績表の3段階のパフォーマンス評価(低水準、中等度、トップ水準)は全病院の43.4%で一致していた。他面、全病院の8.5%は、一方の成績表ではトップ水準、もう一方の成績評価では低水準と評価されていた。成績表間の一致率は2成績表間ではやや高いが(kmax=0.148)、4成績表全体では低かった(kmax=0.111)。以上から、質公開の便益を増すためには、各成績表で用いられている医学的「質」の概念の透明性を増すことが重要であると結論づけられる。

二木コメント-アメリカ以外の国(ドイツ)の病院の成績評価の質も低いことを実証的に示した貴重な研究と思います。

○医療の再商品化?1980-2005年のスウェーデンにおける、利用者負担と医療アクセ面での不平等[の変化]の事例研究
Farrants K, et al: The recommodification of healthcare? A case study of user charges and inequalities in access to healthcare in Sweden 1980-2005. Health Policy 121(1):42-49,2017.[量的研究]

スウェーデン医療では利用者負担が過去数十年間増加している。これは医療の再商品化(医療アクセスの市場での地位への依存)とも理解できる。本研究は1980~2005年に、利用者負担増加が医療アクセスの学歴面での不平等に影響したか否かを調査する。スウェーデン生活状態調査のデータを用いて、低学歴者と高学歴者間の医療アクセス(過去3か月間の医師受診)のオッズ比を1980~2025年で個別に計算し、その結果を健康状態で層別化した(健康、不健康)。スウェーデンではこのオッズ比は医療の平均利用者負担と対応している。健康群では、教育年限の差で医療アクセスの違いはなかった。不健康群では、高学歴者の医療アクセスは低学歴者よりも高かった。医療アクセスの不平等は調査期間で比較的安定していたが、不健康群ではわずかに拡大していた。以上から、スウェーデンでは医療の再商品化と医療アクセスとの関連は弱いと言える。スウェーデンの医療制度は社会的に弱い人々を医療費増から守っている(利用者負担は低額でしかも上限がある)。このことは、利用者負担の導入・引き上げを検討している他の諸国への重要な警告である。

二木コメント-スウェーデンにおける四半世紀の利用者負担増加の医療アクセスへの影響が丁寧に分析されており、スウェーデン医療・社会保障の研究者必読と思います。日本でも同様な研究が行われることが期待されます。

○医療政策のエビデンスの国際的一般化可能性:[薬剤自己負担]政策変化後の服薬遵守の2国間比較
Sinnott S-J, et al: The international generalisability of evidence for health policy: A cross country comparison of medication adherence following policy change. Health Policy 121(1):27-34,2017.[国際比較・量的研究]

処方薬の自己負担は服薬遵守の低下を通して、有病率と死亡率を高める可能性がある。適切なデータがあれば、そのような政策がもたらす意図せざる影響を最小化できる。自己負担導入のエビデンスを2か国-アメリカ・マサチューセッツ州のメディケイドとアイルランドの低所得者対象の「一般医療サービス」(GMS)-のデータを用いて比較する。アイルランドでは2013年からGMS受給者の1処方当たり自己負担が1ユーロから1.5ユーロに引き上げられた。マサチューセッツ州では、2003年からメディケイド受給者の1処方当たり自己負担が50セントから1.5ドルに引き上げられた。対象は、降圧剤、高脂血症剤、および経口糖尿病薬を新規に処方された患者(アメリカ14,259人、アイルランド43,843人)である。両国で、一般化推定方程式による分割線形回帰分析により自己負担導入後の服薬遵守の変化を、対照群(アメリカはペンシルバニア州のメディケイド受給者、アイルランドは公的長期疾病制度加入者)と比較した。

マサチューセッツ州では、自己負担引き上げ後、降圧剤の服薬遵守率は、毎月1%ずつ漸減した。アイルランドでは服薬遵守率は自己負担引き上げ後2.9%低下したが、それ以降8か月は低下しなかった。マサチューセッツ州における糖尿病薬の服薬遵守率の低下は、アイルランドよりも大きかった。高脂血症剤では遵守率変化の差はなかった。以上から、処方薬に対する自己負担の影響のエビデンスは多様である(not "one size fits all")と言える。政策導入後の期間と医療制度の構造的差により両国における自己負担の影響が異なっている可能性がある。

二木コメント-「国際的な一般化可能性」という大きなタイトルに惹かれて読んだのですが、中身はアメリカの2州の比較とアイルランドの2制度との比較の接ぎ木にすぎず、「羊頭狗肉」でした。
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3. 私の好きな名言・警句の紹介(その147)-最近知った名言・警句

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