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フランスの非営利組織-社会医療のウニオプス

主任研究員 石塚秀雄

掲載日2002年12月17日


1.非営利組織は通知型と認可型、雇用ありと雇用なし

ヨーロッパでは、非営利組織や協同組合を括るものとして社会的経済という言葉が使われています。これは米国のNPOとは意味あいも歴史も異なるものです。高齢者・社会的弱者への福祉や仕事興しさらには社会的統合や連帯のかけ声とともに、そうした活動や事業を担う組織を最近では社会的企業、コミュニテイ・ビジネスなどと呼ぶようになってきています。フランスではさらに連帯企業とか非営利企業(ラントゥルプリーズ・アソシアティブ)などと呼ぶ向きもあります。

アソシエーションというのは、正確な定義が難しいのですが、簡単に言えば非営利組織だと言えるでしょう。フランスの場合は、1901年のアソシエーション法に基づいて作られた組織を指します。アソシエーション法によれば「二人以上の人が共同して、継続的に、利潤分配目的ではなくて、認識・活動の一致を目的とする協約」といったものです。種類としては通知型と認可型があります。通知しなくても非合法ではありませんが、法的な権利を持つことができませんし、事務所などの賃貸借契約、銀行口座の開設、資産の所有ができません。ただし会員間で共有の資産をもつことはできます。非営利組織を通知型の法人として登録したい場合は、県に対して目的・場所・定款などを記載した必要書類を提出します。すると県は5日以内に受領の通知を出す義務があります。1981年からはフランス居住外国人も非営利組織を作ることができるようになりました。

認可型の場合は、法人格をとるために公共性の審査が行政裁判所によって行われます。また行政は、非営利組織が非合法的な目的や、良俗に反したり、公共を侵害する活動をした場合は解散を銘ずることができます(1936年法)。通知型非営利組織は、遺贈や公正証書に基づく寄付を受けることはできません。しかし、その事業目的が社会サービスや、慈善、調査研究、医療などの場合は無償贈与を受けることができます。通知型非営利組織は現物寄付をうけられます。寄付側は、法人であれ個人であれ、商法規定にもとづき一定の税控除を受けられます。また国や地方自治体からの公的補助を受けることもできます。また、活動目的のために人を雇用することができます。また借金をすることもできます。商業活動それ自体を目的とすることはできませんが、活動目的に付帯するあるゆる事業を行うことができますが、その場合は付加価値税制に従います。利益を会員間で分配していはいけませんが、非営利組織みずからの投資のためには使えます。経営陣は事業の連帯責任を負います。しかし、そのための特別保険「社会的代理人」保険というものがあります。

非営利組織が公益性を認知されるためには、少なくとも3年間の継続実績が必要です。さらには年間予算が40万フラン(約900万円)、会員200名以上などの条件も満たさなければなりません。非営利組織を所管する政府機関として首相府の諮問機関で、非営利組織代表と専門家などにより構成された非営利組織国民会議(CNVA)があります。非営利組織全体として予算の23パーセントが公的補助金からのものです。

表1 フランスの非営利組織の数(1994)
団体数 730,000内 従業員あり 611,300 従業員なし118,700 従業員数 570,000
スポーツ 21%
医療・社会サービス 13.6%
余暇・商業・雇用・消費 12.3%
教育・訓練 8.2%
社会事業 7.9%
住宅・環境 6.8%
釣り・狩り 2.8%
文化・旅行 0.02%
その他 3.6%
100%
表2 非営利組織の受け取る公的補助金構成
  従業員あり 従業員なし
市町村 37.5% 64.8%
24.7% 14.8%
国機関 27.6% 12.0%
地方公的財源 10.2% 8.4%
100% 100%

従って非営利企業とは、アソシエーションという法的認可を受けた、社会的な目的を持った企業ということができます。概念的には社会的経済企業のほうが、協同組合の企業とか共済組合の企業、民主的従業員持ち株会社などを含むさらに大きい括り方をしていると言えます。フランスの研究者たちの概念区分でいえば図のようなものになっています。

富沢賢治著『社会的経済セクターの分析』でも論じられていますが、フランスでの社会的経済の性格としては、非営利であること、公平な分配、資本より労働を優先すること、民主的参加、自立的組織であること、人間的なことを大事にすることなどが特徴として上げられます。

2.ウニオプス、フランスの医療社会サービス非営利組織連合会

1947年に設立されたウニオプス(UNIOPSS)は50年の歴史を持ちます。戦後のフランスの社会保障制度の公的統合化の中で、官僚的な方式にも商業的な社会保障供給にも満足しない協同的な医療社会サービスをする組織として作られました。単なる慈善ではなくて人間的な質を大事にしようというのが当時の主要なスローガンでした。1970年代には病院作り、障害者施設作りに尽力しました。さらに70年代後半からは貧困化の問題、社会的排除の問題に取り組みました。90年代には高齢化社会への対応してさらに高齢者施設の設置をすすめました。現在、ウイオプスは140の単位連合会、22の地域連合会を組織し、約7,000の医療・社会サービス施設を数えています。それらの施設で働く人は30万人います。

ウニオプスは社会的経済セクターの一員として、協同組合銀行や共済組合とも密接に協力しながら、いろいろな課題に取り組んでいます。

家族問題
子供と親の関係、家族の社会的役割の改善:公的扶助の適用選択の緩和をして 家庭内主義ではなくて社会性を重視する。
若者問題
公的補助を受けながら非営利企業が社会的支援を行う。若者の失業問題は相変わらず深刻である。失業保険給付方式から教育訓練仕事創設の方向で支援していく。
障害者問題
障害者の自立のための職業訓練の促進。生活スタイルの選択幅を広げるための技術、交通、公共空間の整備を促進する。複合障害者のための施設の設立。
高齢者問題
日常家庭介護サービスの促進。老人施設の設備充実など。
医療
総合医療保険法に基づき、医療制度の改革を促進要望。非営利組織の有利性を主張。
住宅
安価住宅制度とともに、社会的弱者の社会的統合化のための住宅供給を促進する。
非営利雇用の促進
新しい労働の形態、失業克服を医療社会サービス分野で促進する。
地域の発展
地域政策の中に、雇用の創出を位置づける。社会的連帯を促進する。
社会的ヨーロッパの建設
社会保障制度の標準化と共通社会政策の促進。

以上

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