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協同集会in長野

「理事長のページ」 研究所ニュース No.9 掲載分

 角瀬保雄

発行日2005年01月31日


非営利・協同と民主経営とが時に対立的な概念として理解されることがありますが、私はそのようにはとらえていません。両者の関係について詳しくは別の機会に論じたいと思っていますが、ここ
では試みにヤフーの検索にかけてみた結果をご紹介したいと思います。非営利・協同のヒット数は2004年12月24日の時点で、3万3437件となっていますが、一方、民主経営は128件でその300分の1でしかありません。ここに両概念の今日の社会における客観的な位置づけが示されているように思います。いまや「非営利・協同は時代の言葉」、「21世紀は非営利・協同の時代」といわれるまでになっています。非営利・協同は文科省の科学研究費補助金の分類リストにも載るようになりました。わが研究所が掲げている非営利・協同という旗印が社会的にも広く受け入れられている証拠といえるでしょう。

ところで昔から秋は学会シーズンといわれてきましたが、専門的なものから学際的なものまで、大衆的な規模のものから小さな研究会にいたるまで、大小さまざまな研究集会が全国で催されます。ここでは2004年秋に開催された二つの集会を紹介したいと思います。一つは「協同集会」です。2 年毎に全国各地で持ち回りの形で開かれているものですが、今年は10月30日から31日にかけ、 「いま『協同』を拓く2004全国集会in長野~人らしく生き、くらし、働くために~」という名で、長野市で開催されました。開催地の非営利・協同団体が中心となって実行委員会を組織していますが、その中心になっているのはわが研究所とも交流関係にある協同総合研究所で、日本労働者協同組合連合会の全面的なバックアップをえています。今回の大きな特徴は、松島松翠・JA長野県厚生連佐久総合病院名誉院長が実行委員長になり、長野民医連や長野医療生協なども事務局団体、実行委員会構成団体に加わり、保健・医療・福祉の事業・運動団体が大きな役割を果たしたことです。また連合や全労連など労働団体の協賛も注目されるところです。わが研究所も協賛団体に名を連ね、長野県の住民でもある主任研究員・理事の石塚秀雄、事務局メンバーの竹野幸子とともに私も参加をしてきたところです。

一日目の全体集会の目玉は田中康夫(長野県知事)と堀内光子(ILO 駐日代表)両氏の記念対談でしたが、田中節の一人舞台の感がありました。また寺島実郎(㈶日本総合研究所理事長)による「世界潮流と日本の針路」という基調講演があり、アジアの国々との協力の重要性が強調されました。話の内容それ自体は興味深いものでしたが、残念ながら氏は非営利・協同については、ほとんど正確な理解をもっているとはみえませんでした。二日目は分科会で12の分科会と2つの移動分科会がありました。私は第1分科会「長野の実践から考える『地域医 INHCC, Institute of Nonprofit Health Care Cooperation 療・保健・福祉の連携』」に参加しました。長野医療生協と佐久総合病院国保川上村診療所、小川村社会福祉協議会の実践報告がありましたが、中越地震の直後で 医療生協の救援活動が報告され、大変盛り上がりました。その後11月3日に開かれたわが研究所の公開研究会で講師をされた色平哲郎医師も、偶然、佐久総合病院の南相木村国保診療所長で、その内容には協同集会の分科会と共通したものがありました。いずれこれらは活字となって紹介されることでしょうから、ここではこの程度にとどめておきます。

次は日本科学者会議の第15回総合学術研究集会です。これも2年毎に持ち回りの形で、全国各地で開かれるもので、今回は11月26日から28日にかけて京都のキャンパスプラザと立命館大学で開かれました。その趣旨は「持続可能な文明をめざして―阻害要因の解明と克服の展望―平和、環境、経済、科学技術、教育・文化のあり方を問う―」というもので、私は東京(中央大学、1984年)、那覇(琉球大学、1996年)に続いて3 回目の参加でした。13の分科会と分散会、特別セッション、自由論題セッション、ポスターセッションが用意された、盛り沢山な内容の集会でしたが、全体としては環境問題に重点が置かれていたように思われました。医療関係では「医療・薬と生命倫理―人間の尊厳をもとめて―」(片平冽彦ほか)という重要な今日的な課題についての分科会がもたれていましたが、私は「持続可能な社会経済システムを問う」という経済の分科会に参加しました。これは二つの会場に分かれてもたれ、それぞれ報告者が異なるというもので、残念ながら片方の話しか聞けないということになります。

私はその一つ、「経済民主主義と新福祉国家のかたち」(二宮厚美)、「持続可能経済と市場メカニズム」(中谷武)、「社会経済システムにおける非営利・協同セクターの位置と役割」(川口清史)、「労働組合と経済民主主義」(横山寿一)、「CSR時代の株主運動と企業改革の課題」(森岡孝二)という、私の研究テーマと直接かかわる報告が集められた会場の方に参加しました。私なりに注目したのは川口清史氏による報告で、非営利・協同セクターの問題が日本科学者会議の総合学術研究集会で取上げられたのは、おそらくこれが初めてではないかと思います。開催地の関係でここでの報告者は関西地方の人々ばかりとなりましたが、私ははるばる東京からの出席ということで、すべての報告者に対する質疑、討論に積極的に参加し、共通認識の形成に貢献できたのではないかと思っ
ているところです。

なお集会後には、折からの嵯峨野の秋をたっぷりと鑑賞・カメラに収めることができました。機会をえてその成果を公開できたらと思っているところです。今回は学会・集会の状況報告といった ものになりましたが、最近の機関誌の記事では北九州の健和会特集が読まれているようです。またワーキンググループの研究会が関西地方でもたれるなど、ようやく研究所の活動も地方へと展開を見せるようになってきました。新しい2005 年度も研究所の研究活動を盛り上げて行きたいと思っておりますので、機関誌やニュースへの投稿、ブックレットの執筆など会員諸兄姉の積極的な参加を期待しております。

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