協同組合学会に出席して
「理事長のページ」 研究所ニュース No.24 掲載分
角瀬保雄
発行日2008年10月31日
前号のニュースで闘病記を書きましたが、それ以来2ヶ月間、自宅の周辺を散歩したり、電車で都内の病院にいったり、今日まで体慣らしの生活を送ってきました。ようやく猛暑も柔らいだ9 月末はじめて東京の外に出かけることになりました。9月27日から28日まで福島大学で開催された日本協同組合学会の第28 回大会に出席することにしました。
福島大学といえば福島高商を前身とし、昔はマルクス経済学の拠点の一つとみられていたものです。しかし、地方の小規模国立大学で、あまり学会などの機会もなく、かねがね一度訪れてみたいと思っていたところです。キャンパスは、昔は町中にあったということですが、いまは山の上に移転しています。私の古い知人も一人、法政の大学院から島根大学に招かれ、そこから福島大学へ転籍しておりますが、きっちりとつまった学会スケジュールのため、会う機会を作ることが出来ませんでした。
大会のシンポジュームは今問題の「共済の課題と展望」(座長・松崎 良)で、私と石塚さん、竹野さんの3 人で研究所から参加、石塚さんは欧米の共済組合法について紹介し、竹野さんは報告を聞く傍ら、研究所のPR など忙しい時間をおくりました。私は病後のリハビリを兼ね自由な参加となりました。討論では協同組合共済の現状について、三大生協共済(全労済・全国生協連・日生協)のような大規模な制度共済と労山などの自主共済との温度差が際立ったことが注目されました。
また、当日会場で個別論題報告のプログラムをみて初めて知ったのですが、当研究所からは大高研道さん、杉本貴志さん、丸山茂樹さん、相馬健次さんが参加報告され、そのほかに中川雄一郎さんがセッションの司会、富沢賢治さんは討論と、研究所のメンバーは大活躍でした。なかでも丸山・富沢論争は会場の注目を集め、私も時間があれば、私見を開陳したいと思いました。当研究所の存在感を実感した次第です。
今年の特徴は、シンポジュームのテーマの「共済」問題や個別論題の「協同労働の協同組合法」とも、純粋理論レベルで終わらない、法改正という優れて政策的、運動論的な内容を含んだもので、期せずして研究所の会員同士の論争が学会の場で繰り広げられることにもなりました。共済(保険業法)のほか、生協法、農協法を初め、労協法(要綱案)など一連の協同組合法改正が現実政治の場に登場してきたなかで、研究の深化と運動の発展が求められている結果といえます。
ただ、残念なのは民医連の「共済組合」問題への取り組みの「厚生事業協同組合」化や保団連の「保険医休業補償共済」など医療と関連するところが深められなかったのと、医療生協の問題が取り上げられなかったことです。
最後にとんだおまけが付きました。それは帰りの新幹線が架線事故で4 時間もの遅れとなり、予定が大幅に狂ってしまったことです。その間の空いた時間は、近くの土湯温泉の日帰り入湯で学会の疲れを癒し、有効活用することができましたが、しかし、それも20分ほどの超特急の入湯で、本来の温泉気分には程遠いものでした。のんびりし過ぎると、何時来るかわからない帰りの列車に乗り遅れる心配があったからです。ただ私にとっては、この小旅行は体調の回復度を計るまたとない機会となったことは確かです。少しずつ元の状態に戻りつつあり、来年には海外旅行もできるようになりたいものと思っています。