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『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター(通巻43号)』(転載)

二木立

発行日2008年03月01日

出所を明示していただければ、御自由に引用・転送していただいて結構ですが、他の雑誌に発表済みの拙論全文を別の雑誌・新聞に転載することを希望される方は、事前に初出誌の編集部と私の許可を求めて下さい。無断引用・転載は固くお断りします。御笑読の上、率直な御感想・御質問・御意見、あるいは皆様がご存知の関連情報をお送りいただければ幸いです。

本「ニューズレター」のすべてのバックナンバーは、いのちとくらし非営利・協同研究所のホームページ上に転載されています:http://www.inhcc.org/jp/research/news/niki/)。


目次


お知らせ

『地域リハビリテーション』3月号(三輪書店。3月15日発行)に論文「今後の医療制度改革とリハビリテーション医療」を掲載します。これは2月9~10日に名古屋市で開催された全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第11回研究大会で行った同名の「基調講演Ⅱ」に大幅に加筆した9頁の「大論文」です。「2006年医療制度改革関連法の位置づけと今後の医療制度改革の見通し」と「リハビリテーション診療報酬改定を中長期的視点から複眼的にみる」の二本柱で、後者では、過去25年間のリハビリテーション関連の診療報酬改定のプラス面とマイナス面を包括的に検討した上で、厚生労働省が本年の診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟に「試行的」に導入する「質に応じた評価」(成功報酬)が、国際的にみても無謀な試みであることを「根拠に基づいて」示します。

この論文は本「ニューズレター」44号(4月1日配信予定)に転載しますが、早めにお読みになりたい方は雑誌掲載論文をお読み下さい。


1.論文:日本福祉大学での教育と研究と校務の23年、そして先へ-専門演習指導を中心として

(『現代と文化(日本福祉大学研究紀要)』第117号(2008年3月31日発行予定)掲載原稿)

(別ファイル:日本福祉大学での教育と研究と校務の23年、そして先へ-専門演習指導を中心として PDFPDF)

本論文は、昨年11月3日に日本福祉大学二木ゼミのOB・OGが開催してくれた「還暦祝賀会」での講演をベースとして、専門演習指導を中心にしながら、私の教育と研究、校務の経験と工夫について述べています。本論文は、『医療経済・政策学の視点と研究方法』(勁草書房,2006)の第4章「私の研究の視点と方法-リハビリテーション医学研究から医療経済・政策学研究へ」の続編(教育重点編)とも言えます。

医療経済・政策学とは直接関係しませんが、大学で教職に就いている方やそれを目指している方には参考になると思い、別ファイルでお送りします。構成は以下の通りです。

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2.最近出版された医療経済・政策学関連図書(洋書)のうち一読に値すると思うものの紹介(その11):12冊

書名の邦訳中の[ ]は私の補足。

<医療経済学、医療政策、医療マネジメントの教科書>(5冊)

○『医療経済学-国際的視点[第2版]』(McPake B, et al: Health Economics - An International Perspective. Routledge, 2008, 292 pages)[中級教科書]

ロンドン大学衛生学・熱帯医学大学院所属の医療経済学者が執筆した定評ある教科書(初版2002年)の第2版です。以下の4部構成(全25章)です:第1部医療経済学入門、第2部経済的評価、第3部市場と市場介入の経済学、第4部医療制度の経済学。アメリカの大半の医療経済学教科書には欠けている「医療の経済的評価」が大きな柱(第2部)になっているのが特徴です。第2版ではこの部分を最新の研究成果に基づいて大幅に加筆すると共に、第3部のエージェンシー理論(第18章)は完全に書き直し、第4部も最近の医療制度改革や国際比較研究の成果に基づいて加筆したそうです。なお、本書の初版は日本語訳も出版されています(大日康史・近藤正英訳『国際的視点から学ぶ医療経済学入門』東京大学出版会,2004,413頁)。

○『医療と公共政策』(Reisman D: Health Care and Public Policy. Edward Elgar, 2007, 362 pages)[中級教科書]

国際的かつ学際的視点から、医療と医療政策の基礎的諸概念、医療政策の目的と政府が採れる政策手段(費用便益分析、参入制限、競争)について、ていねいに解説しています(全11章)。著者は、イギリスの大家(現・シンガポールのNanyang大学教授)です。

○『[アメリカの]医療政策分析-学際的アプローチ』(McLaughlin CP, et al: Health Policy Analysis - An Interdisciplinary Approach. Jones and Bartlett Publishers, 2008, 437 pages)[中級教科書]

アメリカの医療政策とそれの形成過程を学際的(経済学、政治学、マネジメント、コミュニケーション、技術と公衆衛生等)に分析した「革新的教科書」だそうです。次の全3部(15章)構成です:第1部文脈、第2部政策分析過程、第3部参加者としての専門職。個別テーマの10の事例研究も含まれています。アメリカの医療政策を本格的に研究しようとする方には参考になるかもしれません。

○『医療のベンチマーキングとパフォーマンス評価-DEAを用いた評価』(Ozcan YA: Health Care Benchmarking and Performance Evaluation - An Assessment Using Data Envelopment Analysis (DEA). Springer, 2008, 214 pages +CD)[入門教科書]

「オペレーションリサーチ・マネジメント科学」シリーズの最新書です。効率測定法として繁用されるようになっているDEA(包絡分析法)の分析枠組みと手法を、医療組織管理者がパフォーマンス評価の手法として用いることを想定して、ていねいに解説しています(第1部方法、第2部応用の全14章構成)。

○『医療ビジネス』(Cohn KH, et al (eds): The Business of Healthcare. Praeger,Three volumes, 2008, 211+220+268 pages)[中級教科書]

医療産業の急激な変貌に立ち向かうための分析と実用的処方箋を、指導的医師、弁護士、管理者、教育者、ビジネスコンサルタントが示しているそうです。第1巻診療マネジメント(医師向け)、第2巻医療諸組織でのリーダーシップ、第3巻医療制度の改善の全3巻です。アメリカの医療ビジネスの最新のノウハウを知るためには参考になりそうです。

<高齢者ケア>(3冊)

○『高齢人口のための在宅ケア-デンマーク、アメリカ、ドイツの在宅ケアの比較研究』
(Doyle M, et al: Home Care for Ageing Populations - A Comparative Study of Domiciliary Care in Denmark, the United States and Germany. Edward Elgar, 2007, 154 pages)[研究書]

長期ケアシステムの3つの異なる類型を代表する、デンマーク、アメリカ、ドイツ3か国の高齢者在宅ケアの組織・財政・提供システムの異同を、最新のデータ・情報を用いて、ていねいに比較研究しています(全8章)。論点は、「社会ケア」提供者としての国家の役割の変化、ケア労働力の再商品化、インフォーマルなケア提供と消費者主権等です。従来の研究の大半がマクロレベルでの比較だったのと異なり、本書の特徴はミクロレベル(事例)を含めた比較を行っていることです。3か国の長期ケアの公私費用の比較も参考になります(15-18頁)。2人の著者はアイルランド・ダブリンのTrinity 大学ソーシャルワーク・社会政策大学院所属です。

○『高齢者の社会的ケアのパフォーマンス指標』(Challis D, et al: Performance Indicators in Social Care for Older People. Ashgate, 2006, 350 pages)[研究書]

高齢者ケアの地域レベルでのパフォーマンス指標について包括的かつ実証的に検討した世界初の研究書で、以下の8章構成です:1 パフォーマンス・レビューの出現、2 パフォーマンスと規制、3 社会ケアにおけるパフォーマンス指標、4 Cheshire 研究、5 パフォーマンス指標分析枠組み、6 指標の作成と使用、7 パフォーマンス測定の実施、8 結論。イギリスのPSSRU(対人社会サービス研究部門)の高齢者ケア評価研究の厚みを感じさせる本です。特に6と付録で詳細に解説されている「パフォーマンス指標分析枠組み(PIAF)モデル」は、日本で高齢者ケアの質の評価を行う上でも、大いに参考になりそうです。

○『ケア関連の高齢者のQOL-概念、モデルと実証的知見』(Vaarama M, et al (eds): Care-related Quality of Life in Old Age - Concepts, Models, and Empirical Findings. Springer, 2008, 338 pages)[研究書]

ヨーロッパ5か国(フィンランド、スウェーデン、エストニア、イギリス、ドイツ)で行われた野心的共同研究「ケア・キー・プロジェクト」の報告書です(全4部14章)。本研究の理論、方法、実証的知見を示すと共に、効果的・効率的な高齢者ケアを促進するための方法を検討しています。その一環として、身体的長寿と社会的、感情的、知的側面を統合したケア関連QOLの統合理論を示すと共に、それを用いて5か国の在宅・施設ケアの場面でのQOLを比較しています(第3部)。

<その他>(4冊)

○『医療の分権化-戦略と結果』(Saltman RB, et al (eds): Decentralization in Health Care - Strategies and Outcomes. Open University Press, 2007, 298 pages)[研究書(論文集)]

European Observatory on Health Systems and Policies(ヨーロッパ8か国の政府、WHOヨーロッパ事務所、ロンドン大学等で構成される医療問題についての研究機構)発行の「叢書」の最新刊です。多くのヨーロッパ諸国で、医療制度のマネジメント戦略として注目されるようになっている分権化の論理・理論と現実・効果、分権化を成功させるために必要なマネジメント・プロセスについて、多面的に検討しています。第1部戦略的次元、第2部最近の経験の評価の2部構成です(全14章)。ヨーロッパ諸国における医療の分権化についての初めての研究書と思います。

○『病院の方針とパフォーマンスの評価-病院方針・生産性研究の寄与』(Blank JT, et al(eds): Evaluating Hospital Policy and Performance: Contributions from Hospital Policy and Productivity Research. Elsevier, 2008, 250 pages)[研究書(論文集]

『医療経済学・医療サービス研究の進歩』シリーズ(年1回発行)の最新版(第18巻)で、全18論文を収録しています。第4章ではBazzoliが「アメリカにおける病院の合併(consolidation)・統合活動」を、第5章ではAlamらがアメリカの非営利病院の病院チェーン等との提携が費用効率に与える影響を、第7章ではMutterらが「アメリカの病院の所有形態が費用効率に与える影響」を、検討しています。この分野の最新の研究動向(あるいは流行)を鳥瞰するには便利な本です。

○『医療技術の革新-倫理的問題と課題』(Eaton ML, et al: Innovation in Medical Technology - Ethical Issues and Challenges. The Johns Hopkins University Press, 2007,155 pages)[研究書]

最先端医療技術と共に生じた、倫理的、法的、社会的諸問題を多面的に検討し、患者保護と技術革新から得られる利益を両立させる道を探っています(全7章)。第3~6章で、強力ではあるがほとんど規制されていない次の4つの技術について詳細な事例検討を行っています:医薬品の適応外使用、革新的手術、生殖補助医療、脳機能画像診断(neuroimaging)。ただし、費用の問題は検討していません。

○『医療のマネジメントと政策における流行、誤りと愚かさ』(Marmor TR: Fads, Fallacies and Foolishness in Medical Care Management and Policy. World Scientific, 2007, 159 pages)[評論(論文集)]

アメリカで発表される多数の医療政策・マネジメント文献の「流行、誤りと愚かさ」を痛烈に批判した6論文を収録しています。それらの「解毒剤」にはなりそうです。

 

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3.最近発表された興味ある医療経済・政策学関連の英語論文

(通算32回.2007年分その10:6論文)

○患者の年齢が入院医療満足度に非線形の影響を与える証拠(Moret L, et al: Evidence of a non-linear influence of patient age on satisfaction with hospital care. International Journal for Quality in Health Care 19(6):382-389,2007)[量的研究]

患者の年齢は医療満足度に影響を与える主要な社会的・人口学的要因であることが確認されているが、年齢と患者満足度との関係については論争があり、年齢が高いほど満足度が高いとの報告がある一方で、それと逆の報告もある。そこで、フランスの27の急性期教育病院で行われた2つの別の入院患者満足度調査で得られたデータを用いて、患者の年齢と医療・看護サービスの質に対する満足度の関係、特にそれが線形であるか否かを検証した。

1つの調査では1547人の入院患者を対象にして、退院時にEQS-H質問票を用いて満足度を調査し、もう1つの調査では7624人の自宅退院した元入院患者を対象にして、電話調査によりSAPHORA質問票を用いて満足度を調査した。調査結果が以下の3つのモデルのうち、どれにより適合するかを探索的に検討した:単純な線形モデル、5群階段関数、勾配に変化のある線形モデル。その結果、どちらの質問票を用いた場合にも、患者の年齢と満足度との関係は線形ではなく、18~64歳では両者に線形かつ正の相関があるが、65歳以上では負の相関があることが分かった。

二木コメント-フランスで行われた、従来の医療満足度調査の盲点を突いた面白い研究で、日本でも追試が必要と思います。

○[アメリカの急性期病院における]正看護師の配置水準と患者アウトカムとの関連-体系的文献レビューとメタアナリシス(Kane RL, et al: The association of registered nurse staffing levels and patient outcomes - Systematic review and meta-Analysis. Medical Care 45(12):1195-1204,2007)[文献レビュー]

急性期病院における正看護師(RN)の配置水準と患者のアウトカムとの関連を検討するために、看護師対入院患者比率別に患者のアウトカムのオッズ比を検討した28文献のレビューとメタアナリシスを行った。その結果、ICUでも、外科病棟でも、内科病棟でも、入院中死亡率は正看護師の配置水準が高いほど低かった。患者1人当たり正看護師数が多いほど、入院中の肺炎発症、計画外抜管、肺不全、心停止は少なかった。患者1人当たり正看護師数が1人多いと、平均在院日数はICUで24%、外科病棟で31%短かった。二木コメント-正看護師の配置水準が高いほど患者アウトカムも良いとの主張が「根拠に基づく」ことを、疑問の余地なく(再)確認した論文です。ただし、医療費との関連は検討されていません。なお、本論文はAHRO(医療研究・質局)の委託により行われた急性期病院における看護師配置水準と患者アウトカムとの関係の大規模研究の一部であり、研究の全貌は、http://www.ahrq.gov/clinic/evrptpdfs.htmに公開されているそうです。意外なことに、アメリカで患者対入院患者比率の最低基準が法定化されている州はカリフォルニア州だけだそうです。

○[アメリカの]営利病院と非営利病院の看護師配置水準、入院中死亡率、および在院日数[の比較](Mark BA, et al: Nurse staffing, mortality, and length of stay in for-profit and non-for-profit hospitals. Inquiry 44(2):167-186,2007)[量的研究]

病院の看護師配置水準が高いほど医療の質も高いことは多くの研究で確認されているが、それと病院の開設形態との関係は検討されてこなかった。そこで、全米11州の900以上の病院の1990-1995年の入院患者データを用いて検討したところ、ケースミックス調整済みの正看護師配置水準は、営利病院で非営利病院よりも統計的に有意に低かった。それに対して、患者のアウトカム(入院中死亡率と平均在院日数)の分布は営利病院の方が非営利病院よりむしろ良好であったが、病院所在地域の人口・市場構造の違いを調整するとこの差は消失した。

二木コメント-営利病院は非営利病院に比べて看護師配置基準が低いことは多くの先行研究で確認されています。本研究は、患者のアウトカムの単純な指標を用いた評価の危うさも示しています。

○医療技術のもたらす生涯[医療]費用・便益(Cutler DM: The lifetime costs and benefits of medical technology. Journal of Health Economics 26(6):1081-1100.2007)[量的研究]

医療利術がもたらす生涯医療費と便益の測定は、医療技術革新の評価と医療の生産性を決定するために不可欠である。本研究では、1986~88年の3年間に心筋梗塞の治療を受けたメディケア加入者約12万人の17年間の追跡データを用いて、冠動脈血行再建術(バイパス手術または血管形成術)がもたらす生涯医療費と便益を計算した。その結果、再開通術により余命は1.1年延長し、それに伴う生涯医療費の増加は3.8万ドルであった。これら費用のうち60%は心筋梗塞発症直後にかかっていた。余命1年延長当たり費用は3万3246ドルであり、この数値は、アメリカで一般に余命1年延長の価値(費用)とされている約10万ドルと比べると、はるかに少なかった。これにより、心筋梗塞に対する冠動脈血行再建術は、費用対効果比が非常に高いことが明らかになった。

二木コメント-医療技術が医療費に与える影響についての先行研究は大半が、マクロレベルでありしかも短期的費用に限定されていたため、ミクロレベルでしかも生涯医療費を検討した本研究は貴重と思います。また本研究は、医療効率化(費用対効果比の改善)と医療費削減とは同じではなく、逆に医療効率化により(生涯・総)医療費が増加することもある好例と言えます。なお、余命1年延長の価値(費用)が約10万ドルという数値は、著者(等)が同種研究でいつも用いていますが、その根拠は今ひとつハッキリしません(例えば、Is technological change in Medicine worth it? Health Affairs 20(5):11-29,2001)。

○薬剤溶出性ステントの経済評価:体系的文献レビューとモデルを用いた費用効用分析(Kuukasjaervi P, et al: Economic evaluation of drug-eluting stents: A systematic literature review and model-based cost-utility analysis. International Journal of Technology Assessment in Health Care 23(4):473-479,2000)[文献レビューとシミュレーション研究]

冠動脈疾患患者に対する経皮的冠動脈インターベンションで、薬剤溶出性ステント(DES)を用いる方式と従来型のベアメタルステント(BMS)を用いる方式の、費用効用分析をランダム化試験またはモデル分析により行った最新の13論文(2004~2006年に各種データベースに収録)のメタアナリシスを行った。DESの費用は4578.7ユーロで、BMSの費用(4003.3ユーロ)より14.3%高かった。費用対効果比は、質調整済み余命(QALY)の1年延長当たりの費用により測定した。ランダム化試験に基づく2論文ではDESの方が費用対効果比が優れている(以下、費用効果的)とし、6論文ではDESの方が特定の条件下では費用効果的かもしれないとしていた。それに対して、4論文ではDESは費用効果的ではないとされ、1論文では明確な結論は得られていなかった。結論として、著者はどんな医療制度の下でもDESの方がBMSに比べて費用効果的治療であるとの一貫した根拠は得られていないため、BMSに比べて高価なDESの使用を正当化するためには、DESが冠動脈の再閉塞リスクを著名に減らすことが示される必要があると主張している。

二木コメント-日本と世界でのDESをめぐる最近の論争については、『日経メディカル』2007年2月号のレポート「議論続く薬剤溶出性ステント」(野村和博記者)が分かりやすく解説しています。ただし、DESとBMSの費用対効果比は両ステントの(絶対・相対)価格により変わってくるため、欧米の費用効用分析の結果をそのまま日本に当てはめることはできないかもしれません。

○高齢者の転倒と外傷を予防するための地域と救急部門での多面的評価と[個々人のリスクに]的をしぼった介入:体系的文献レビューとメタアナリシス (Gates S, et al: Multifactorial assessment and targeted intervention for preventing falls and injuries among older people in community and emergency care settings: systematic review and meta-analysis. British Medical Journal , originally published online 18 Dec 2007. In print, 336:130-133,2008) [文献レビュー]

イギリスのNHSは、高齢者の転倒予防の文献レビュー結果に基づいて、2001年から多面的なリスク評価と個々人のリスクに的をしぼった介入プログラムを導入している。そこで、そのような介入プログラムの効果をランダム化試験または準ランダム化試験により検討した19論文(1994~2007年発表)のレビューとメタアナリシスを行った。それらプログラムは、地域、プライマリケア、または救急部門で行われていた。アウトカム指標としては、転倒回数、転倒による外傷、転倒率、死亡、入院、医療機関受診、施設入所、身体活動、およびQOLが用いられていた。介入群・対照群を合わせた、介入プログラム後の追跡期間中の転倒率は平均0.91、転倒による外傷発生率は0.90で、両群に差はなかった。入院率、救急受診率、死亡、施設入所についても差はなかった。対象をいくつかのサブグループに分けて分析しても、やはり両群で差はなかった。この結果に基づいて著者は、多面的転倒予防プログラムが転倒・外傷の予防に有効であるとの「根拠は限られている」と結論づけている。

二木コメント-2003年の高齢者の転倒予防についてのコクラン・レビューでは、「介入予防は転倒予防には効果的だが、転倒関連の事故を予防できるか否かは必ずしも明らかではない」とされていました(Gillespie LD, et al: Interventions for preventing falls in elderly people. The Cochrane Database of Systematic Reviews 2003, Issue 4.Art.No.:CD000340.DOI:10.1002/16651858.CD000340.詳しくは、拙著『介護保険制度の総合的研究』勁草書房,2007,247-248頁)。今回のレビューでは、「多面的評価と個々人のリスクに対応した介入」というより効果の期待できる転倒予防プログラムに対象を限定しているにもかかわらず、より厳しい結果が出ています。なお、本レビューでも、介入予防プログラムの経済分析は行われていません。

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4.私の好きな名言・警句の紹介(その39)-最近知った名言・警句

<研究と研究者のあり方>

<その他>

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