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『文献プロムナード』への序(第52回医療政策学校レジュメ転載)

 野村拓

発行日2007年12月21日


1. なぜ「本」(モノグラフ)なのか

(第19回の「モノグラフの意味」参照)

2. 早送りが聞かない「画像」と「パラパラ読み」がきく「本」

1日は24時間しかないのに、DVDやCDをたくさん積み上げている人がいる。積み上げるのなら本を積み上げるべきではないのか。本は「パラパラ読み」しても本だけれども。画像は早送りすると画像でなくなってしまう。早送りのきかない画像資料を積み上げても、1日24時間の中で、そこから得られる情報は貧しい。その点、本の「パラパラ読み」は時間密度の高い情報取得法といえるのではないか。また、出される本の多さに比べて読む時間は短いのだから、いまや「パラパラ読み」しても、なにか意味のある本が求められているような気もする、つまり、「パラパラ読み」して、なにかひっかかり、その「ひっかかり」をたぐっていくと全体が見えてくるというような本である。

3. 「パラ」と「パラ」の間の歴史的Contextを縦横に想像する能力(とその後における検証)

4. テーマの歴史的なContextを把握している研究は後世まで残るが、そうでないクロスセクションの調査・分析的研究(世渡り・学位取得用)の多くは、あっという間に「研究廃棄物」で産廃処理(暴力団の資金源)

5. 張り巡らされた歴史的Contextについては、それが見える人と見えない人とに分かれるが、見えるようになるには「人生全体」に近いほどの時間がかかる場合が多い。いいかえれば、歴史的Contextとは、比較的によく仕事をした人の「晩年の認識水準」と考えればいい。

6. しかし、これからの人は、晩年にいたるまでに歴史的Contextについての認識水準を高まておかなければ、学問の進歩はない。

7. 『文献プロムナード』は5年間(2003-2007)にわたる連載であり、第19回「出版トレンド」を除いて、新着本を、そのときどきの問題意識で組み合わせて紹介した。

第19回では「出版トレンド」を見るために、20年前の1987年に出版された海外文献だけでストーリーを構成してみたが、これをトレンド全体のなかに位置づける仕事は<医療政策学校・新シリーズ>『海外文献・分類学』として2008年4月以降に試みるつもりである。

なお、「文献一覧表」の作成については、竹野幸子さんにご苦労を願った。

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