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『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター(通巻101号)』(転載)

二木立

発行日2012年12月01日

出所を明示していただければ、御自由に引用・転送していただいて結構ですが、他の雑誌に発表済みの拙論全文を別の雑誌・新聞に転載することを希望される方は、事前に初出誌の編集部と私の許可を求めて下さい。無断引用・転載は固くお断りします。御笑読の上、率直な御感想・御質問・御意見、あるいは皆様がご存知の関連情報をお送りいただければ幸いです。


目次


お知らせ

私の学部ゼミOB・OG有志が、2013年3月23日(土)に、下記のように私の「日本福祉大学学長就任祝賀会」を開いてくれることになりました。参加を希望される方は、私にご連絡いただければ、折り返し公式の「開催案内」をメールでお送りします。


1.論文:医療の電子化で年3兆円の医療費が削減可能?-「日経」・総務省推計の検証

(『日本医事新報』連載「深層を読む・真相を解く(18)」2012年11月10日号(4620号):30-31頁)

「情報通信技術で医療費はどこまで削減できるのか。情報通信の旗振り役である総務省は、現在の削減効果を約1000億円にとどまると試算している。ただ、電子カルテや遠隔医療を活用すると、その効果は最大3兆円に跳ね上がる。理想と現実との間にある30倍もの格差。医療の効率化の歩みは遅い(以下略)」

「日本経済新聞」10月1日朝刊はこのように大々的に報じ、6つの項目別に削減できる医療費(総額2兆8079億円)の表も掲載しました。

私は長年、国内外の医療経済・政策学関連の文献を幅広く読んでいますが、このような大胆な推計をみるのは初めてです。そこでこの記事の元資料を調べたところ、直接の出所は総務省『平成24年版情報通信白書』の「付注3 医療分野のICT化の効果推計結果」(429-431頁)、それの元調査は同省「医療分野のICT化の社会経済効果に関する調査研究報告書」(2012年3月。以下、総務省「報告書」)でした。今回は、「日経」記事と総務省「報告書」の推計の信憑性を検証します。

3兆円削減説は「日経」の妄想

まず驚いたことに、総務省「報告書」は、現在(2011年度。以下同じ)の削減効果(合計1043億円)しか推計しておらず、2兆8079億円という数字は「日経」の独自推計でした。しかし上記記事を読めば誰もが2つの数字は総務省の推計と誤解してしまい、これでは「詐欺」と言われても仕方がありません。

しかも独自推計の方法が極めて稚拙であり、過大評価の枠を超えて「妄想」の域に達していました。

具体的には、「日経」記事の表に示されている数字は、いずれも総務省「報告書」の現在の推計削減効果(後述するようにこれ自体が過大)を、機械的に現在の普及率で除した数字でした。例えば、表では「健康管理サービスで高齢者らを健康に」の削減額は1兆7231億円とされ、削減額総額の61.4%に達していますが、これは現在の削減額379.1億円を現在の普及率2.2%で除する(つまり45.5倍化する)ことによって算出したものでした。

他の5項目の現在の普及率も5.7%~14.3%にとどまっており、表の削減額は現在の削減額を単純に7.0倍~17.5倍化した数字でした。

しかし、現在の数値の7~46倍もの「外挿」は推計の禁じ手です。しかも、医療技術の普及により単位当たりの効果は漸減するのが一般的であり(「収穫逓減の法則」)、仮に現在の削減額が妥当だとしても、直線的(線形的)外挿は極端な過大推計となります。

実は総務省「報告書」は、「参考」として「ICT化による効果の将来推計」も行っています。それによると各項目の普及率の伸びは年0.5%ポイント増(健康管理サービス)~1.8%ポイント増(電子カルテ)とされ、その結果、9年後の2020年の普及率は電子カルテでさえ33.1%、健康管理サービスでは9.0%にとどまるとされています。「日経」の3兆円削減との試算は、政府や医療機関が努力すれば、すべての項目で、医療の電子化の普及率がすぐに100%に達することを前提としており、浮き世離れしています。

なお、「日経」が医療の電子化で大幅な医療費削減が可能と報道するのは今回が初めてではなく、例えば5年前の2007年5月12日朝刊は、「(診療報酬明細書の電子化の医療費)抑制効果は1兆円を超える」との内閣府幹部の試算を報道しました。しかし、今回は、総務省の権威を利用した「日経」の独自試算であり、罪ははるかに重いと言えます。

総務省「報告書」の推計もお粗末

総務省「報告書」の現在の医療費削減額(医療費の適正化)の推計自体も極めてです。「報告書」は、6つの項目で医療費削減額を推計していますが、それの根拠は、信頼性に欠けるアンケート調査や記述データ、小規模個別調査や事例、専門家ヒアリングばかりで、最も厳密なランダム化試験はもちろん、何らかの比較試験は全くありません。私の知る限り、これら6つの項目(介入)による医療費削減効果を大規模なランダム化試験で実証した研究はありません。例えば、最新の体系的文献レビューは、「疾病管理プログラムは医療費を抑制すると広く信じられているが、その主張の根拠はまだ決定的ではない」と結論づけています(de Bruin SR, et al: Health Policy 101(2):105-121,2011)。

総務省「報告書」の推計の致命的欠陥は、医療技術の費用効果分析で不可欠な「費用」(医療の電子化の費用)を全く示さず、「効果」(医療費削減効果)のみを示していることです。しかし、正しくは、医療の電子化による医療費削減効果から医療の電子化の費用を差し引いた「純医療費削減効果」を示すべきです。実は「報告書」の最後には、「参考」として、矢野経済研究所による「電子カルテ(レセコンを含む)」と「遠隔医療システム(健康管理サービスを含む)」の費用の「簡易推計結果」も示されています。それによると、両者の「費用」(導入費用+保守費用)はそれぞれ1332億円、1274億円で、単独で現在の医療の電子化による医療費削減「効果」1043億円を大幅に上回ってしまうのです。

米国では医療の電子化の乱用で医療費増

医療の電子化で医療の質の向上と医療費節減の両方が実現できるとの期待は、日本だけでなく、米国にも根強くあります。特に、オバマ政権が2010年に成立させた「患者保護・医療費負担適正化法」は、民間医療保険をベースにして国民皆保険制度に接近する一方、医療の電子化の促進により医療費の削減を目指しています。

しかし、「ニューヨーク・タイムズ」は、本年9月21日、大規模な独自調査により、「理論的」には(「適切に利用された」場合には)医療の質を引き上げつつ医療費を抑制する可能性があるはずの電子医療記録が、「現実的」には、病院・医師とソフトウェア会社が「共犯」でそれを悪用し、「クローニング」(記録のコピー&ペースト)と「アップコーディング」を行うことにより、医療費上昇という「予期せぬ結果」を招いていることを明らかにしました("Medicare bills rise as records turn electronic")。この報道の衝撃は大きく、オバマ政権はただちに病院と医師に電子記録の乱用についての強い警告を発したそうです("Abuse of electronic health records" 9月25日)。

「日経」記事と総務省「報告書」は、医療の電子化による医療費削減の「理論的」可能性のみに目を奪われ、このような「現実的」危険性を見落としていると言えます。

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2.論文:日本のTPP参加が医療に与える影響についての論争-第7回日韓定期シンポジウムでの報告

(「二木教授の医療時評(その108)」『文化連情報』2012年12月号(417号):12-18頁)

はじめに

日本では2010年10月に、菅直人首相(当時)が、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加意志を突然表明し、それ以降、国論を二分する論争が生じました。特に、2011年11月に、野田佳彦首相が、与党(民主党)内の強い反対を押し切って、TPP交渉に参加する方針を表明してから、逆にTPPに対する関心と懸念が高まりました。ただし、2012年に入り、国会論戦の焦点が「社会保障・税一体改革」に移行してからは、その論争は下火となりました。野田内閣は、現在でも、アメリカ等関係国との交渉を水面下で進めていますが、与党内にTPP参加への慎重論が根強いこともあり、表立っては積極的方針は示していません。

私自身は、2011年4月に発表した論文「TPPと日本の医療」で、TPP参加には反対との立場を明らかにした上で、当時医療関係者の間で根強かった、TPPに参加すると日本医療・国民皆保険制度が崩壊するとの「地獄のシナリオ」には疑問を呈しました。その後も、TPP参加が日本医療に与える影響を複眼的・分析的に検討した論文を継続的に発表し、本年6月にはそれらをまとめた著書『TPPと医療の産業化』(勁草書房)を出版しました。

本報告は2つの柱立てで行います。まず、私の主要3論文をベースにして、TPP参加が日本医療に与える影響を予測します。手前味噌ですが、この予測は、現在では、日本医師会を含めた医療団体・医療関係者の間で広く共有されるようになっています。次に、TPP参加をめぐる日本の医療界・政党等の最新の動きを紹介し、日本のTPP参加は決して既定の事実ではないことを示します。最後に、TPPの発足そのものさえ既定の事実ではなく、今後空中分解する可能性もあることを指摘します。

1.TPP参加が日本医療に与える影響-私の分析と将来予測

(1)「TPPと日本の医療」(2011年4月)より

私は、次の2つの理由から、日本がTPPに参加することには反対です。第1の理由は、生産性と価格競争力の点でアメリカやオーストラリア等に到底太刀打ちできない日本農業が壊滅的打撃を受け、日本の食の安全が脅かされるからです。第2の理由は、TPPは、物品の貿易だけでなく、サービス貿易、政府調達、知的財産、金融あるいは人の移動なども対象にする包括的な自由貿易協定であるため、日本が参加した場合には、アメリカから医療サービスの自由化=混合診療の原則解禁や株式会社による病院経営の解禁を求められ、それにより医療の営利化が進む危険が強いからです。

と同時に、私は、一部の医療関係者・医療団体が、TPPに参加すると日本医療・国民皆保険制度が崩壊するとの「地獄のシナリオ」を主張していることには疑問も持っており、日本がTPPに参加した場合、アメリカがどのような要求をし、それにより日本の医療保険・提供制度がどのように変わるかに焦点を当てて、複眼的に検討します。

アメリカ政府の医療に関する対日要求

まず、アメリカ政府の日本医療の市場開放要求について、米国通商代表部(USTR)の『外国貿易障壁報告書』を用いて検討します。医療に関連するアメリカ政府の対日要求は、年を経るごとに、より広範に、より詳細になっており、オバマ政権が成立した2009年を境に、それまでの医薬品・医療機器分野における規制改革要求と保険分野および医療サービス分野における参入障壁撤廃要求に加え、新たに医療IT分野の規制改革要求を取り上げるようになっています。医療の中核を占める「医療サービス」については、この期間、次の2つを論点として取り上げています。「日本の規制が、日本の医療サービス市場への外国資本の参入を妨げている」、「アメリカ政府は、日本政府に対して、外国資本への医療分野への市場開放のファースト・ステップとして、営利法人が営利病院を運営し、すべての医療サービスを提供できるようにする機会(経済特区を含む)を開くことを要求している」。

以上から、もし日本がTPPに参加した場合には、アメリカからの日本の医療市場開放要求が格段に強まり、日本医療の市場化・営利化が進むことは確実であると結論づけられます。

ただし、見落としてならないことが2つあります。1つはアメリカは決して一枚岩ではなく、その要求も必ずしも一貫しておらず、「場当たり的」であることです。もう1つは、医療の市場化・営利化は決してアメリカ側だけの要求ではなく、日本の大企業も求めていることです。つまり、医療の市場化・営利化は単なるアメリカからの一方的圧力ではなく、日米合作なのです。

落とし所は「経済特区」だが可能性は低い

この分析に基づいて、私は、仮に日本がTPPに参加した場合にも、アメリカ側の要求通りに、医療の市場化・営利化が全面的に進み、日本の医療制度・国民皆保険制度が崩壊する可能性はほとんどないと判断しています。私は、日米交渉のギリギリの「落とし所」は、米国通商代表部の文書が明記している「経済特区」に限定した、混合診療の原則解禁や株式会社による病院経営の解禁になると予測しています。その場合、それがアメリカ資本単独ではなく、日米合作で進められるのは確実です。言うまでもなく、経済特区を利用できるのは、国内外の富裕層の患者に限られます。

他面、経済特区で行われる「格差医療」が、その後全国に一気に広がる可能性はほとんどないとも判断しています。それには、2つの理由があります。まず、富裕層対象の医療は一般の医療に比べるとはるかに高額であるため、それを全国規模で実施すると、総医療費だけでなく公的医療費も急騰するからです。これは、典型的な「新自由主義的医療改革の本質的ジレンマ」です(「医療の市場化・営利化は、企業にとっては新しい市場の拡大を意味する反面、医療費増加(総医療費と公的医療費の両方)をもたらすため、(公的)医療費抑制という『国是』と矛盾する」)。もう1つの理由は、マクロ的な効率(費用対効果)が世界一であり、しかも国民の8割が「信頼」している国民皆保険制度の根幹(平等な医療の提供)を崩すことは、どんな政権でも政治的に不可能だからです。

ただし、たとえ経済特区に限定されるとは言え、医療分野に市場原理が導入された場合には、医療の非営利性の根本理念が崩れ、経済特区以外でも、一部の医師・医療機関の営利的行動が強まることにも危惧を表明しました。かつてグレイ(Gray)は1980年代のアメリカ医療の営利化を検討した際、「医療倫理の最大の脅威は営利企業の参入そのものではなく、企業家的に行動する医師や非営利病院が増えていることである」と指摘しました。これと同じことが日本でも生じ、ひいてはそれが国民の医師・医療機関への信頼を低下させる危険があります。私がTPP参加が医療に与える影響で一番心配しているのはこの点です。

(2)「TPPに参加するとアメリカは日本医療に何を要求してくるか?」(2011年12月)より

野田佳彦首相が2011年11月11日にTPPの交渉に参加する方針を表明したことを受けて、米韓FTA(自由貿易協定)等も参考にして、日本がTPPに参加した場合、アメリカは日本医療に何を要求してくるかを、3段階に分けて具体的に予測します。その上で、アメリカの要求がそのまま実現するわけではないことに注意を喚起します。

医療機器・医薬品価格への規制の撤廃

第1段階は日本の医療機器・医薬品価格規制の撤廃・緩和要求です。これは米国通商代表部が毎年発表する「外国貿易障壁報告書」の定番です。2011年版では「医療機器・医薬品」の貿易障壁の指摘と是正要求は、保険、テレコミュニケーション(医療ITを含む)に次ぐ長さであり、医療機器については外国平均価格調整ルールの廃止または改正を、医薬品に関しては新薬創出加算の恒久化と加算率の上限撤廃、市場拡大再算定ルールの廃止または改正等を列挙しています。

私は、本論文執筆のため、2011年11月22日に韓国国会で強行可決された米韓FTAの「医療機器・医薬品」の妥結内容を調べたのですが、それがアメリカの日本への要求と瓜二つなことに驚きました。その上、米韓FTAでは、アメリカ企業は韓国政府の定めた医薬品・医療機器の償還価格に不満がある場合には、政府から独立した「医薬品・医療機器委員会」に異議申し立てできることすら定められました。これは決して対岸の火事ではなく、内閣官房等が2011年10月に発表した「TPP協定交渉の分野別状況」も、「物品市場アクセス」の項でこの事実を紹介し、「医薬品分野に関する規定が置かれる可能性はある」と認めました。

もし現行の医療機器・医薬品価格の規制が撤廃・緩和された場合には、最新鋭医療機器や画期的新薬の価格が高騰し、患者負担増加と保険財政の悪化が生じることは確実です。さらにそれは医療サービス価格(診療報酬)の強い引き下げ圧力ともなります。なぜなら、「診療報酬改定率=全体改定率-薬価引き下げ率(診療報酬換算)」という関係にあり、全体改定率が一定の場合、新薬の価格高騰による薬価引き下げ率の低下は、自動的に診療報酬改定率の圧縮・引き下げとなるからです。

医療特区に限定した市場原理導入

アメリカの第2段階の要求は、医療特区(総合特区)に限定した株式会社の病院経営の解禁と混合診療の原則解禁(つまり市場原理導入)です。アメリカは建て前としては、医療特区に限定しない「市場開放」を要求していますが、それには日本の医療関連法規全体の改正が必要であり、短期的には実現しないことを理解しているからです。「外国貿易障壁白書」(2008~2010年版)の「医療サービス」の項にも、このことが以下のようにカッコ付きで示されています。「米国政府は、日本政府に対し、医療市場を外国のサービス提供者にも開放し、営利法人が営利病院を運営し、すべてのサービスを提供できるようにする機会(経済特区を含む)を認めることを引き続き要求している」

ここで注意すべきことは、この「営利法人」がアメリカ企業のみを意味しないことです。私は、もし医療特区での株式会社の病院経営が解禁された場合、アメリカ資本単独ではなく、日米合作で進められると予測します。この場合、「自費診療部分の補填=患者負担の軽減」を大義名分にして、アメリカの民間医療保険の参入がさらに拡大します。

ISD条項と市場原理の全面的導入

ただし日本政府がこの第2段階の要求を受け入れても、それによる市場拡大はごく限られます。この場合、TPPに盛り込まれる可能性が強い「投資家と国家間の紛争解決手続き」(ISD条項)に基づき、アメリカ企業が日本政府に損害賠償請求訴訟を起こす可能性があります。この裁判で企業が勝利した場合、アメリカ政府はそれをテコに、全国レベルでの株式会社の病院経営解禁と混合診療の原則解禁を求めてくることは確実です。この第3段階の要求が実現したら、国民皆保険制度の理念は変質し、給付も大幅に劣化します。

アメリカの要求が必ずしも実現しない理由

しかし、アメリカの要求がそのまま実現するわけではありません。どの程度実現するかは医療への市場原理導入に反対する国会内外の運動が今後どの程度盛り上がり、しかも持続するかにかかっています。このことを前提にした上で、私は、第1段階は実現する可能性が高いし、第2段階の実現可能性も長期的には否定できないが、第3段階の実現可能性はごく低いと判断しています。

それには政治的理由と経済的理由があります。政治的理由は、野党や日本医師会等の追及により、TPPがバラ色ではなく、国民皆保険制度に悪影響を与えることがかなり知られてきたからです。それに対し、韓国ではFTA交渉妥結までその内容はほとんど国民に知らされませんでした。経済的理由は、混合診療原則解禁や株式会社の医療機関経営解禁を行った場合、日米の個別企業の利益は増加するが、それにより総医療費・公的医療費とも(不必要に)増加するため、医療費抑制という政府の基本政策と矛盾するからです。

(3)「TPPへの参加が医療・医薬品産業に与える影響」(2012年1月)より

日本がTPPに参加した場合、医薬品産業と患者・保険財政に与える影響を予測します。

医薬品産業に与える影響

まずTPPが医薬品産業に与える影響を一括りで論じるのは無意味です。私は、欧米の多国籍製薬企業に伍して画期的新薬を開発・販売できる一握りの国内企業、すなわち大手5社と一部の準大手にとっては、TPPは有利に働くかもしれないが、それ以外の大半の国内企業の市場・売り上げは縮小すると予測します。

なぜなら、財務省・厚生労働省は、TPP参加による画期的新薬の薬価上昇等により生じる薬剤費総額の膨張を可能な限り抑制するために、先発医薬品中の長期収載品と後発医薬品の薬価を大幅に引き下げるからです。これにより、これら医薬品に依存している準大手・中小製薬企業の業績は一気に悪化して、医薬品業界の再編、M&Aが急増し、一握りの外国資本と国内最大手企業による日本の医薬品市場の「寡占的支配」が生じる可能性があります。

患者と保険財政に与える影響

次に、TPPが患者に与える影響については、画期的新薬の価格上昇と後発薬の発売遅延により、すべての患者の自己負担は確実に増え、それにより低所得患者の受診抑制が生じ、彼らの健康水準が悪化する危険があります。他面、画期的新薬の国内販売が早まる可能性があるので、ある種のがん・難病患者のうち、多額の自己負担を払える高所得患者には福音になる可能性もあります。ただし、画期的新薬といわれるもののうち、大幅な延命やQOLの向上が実証されているものはごくごく限られます。

第3に、TPPの保険財政への影響については、新薬の価格上昇と後発薬の発売遅延により、薬剤費が膨張し、医療保険財政はさらに悪化すると予測します。その結果、医療機関に支払われる診療報酬「本体」(技術料)は現在以上に抑制され、医療機関の経営悪化が進む危険があります(第2論文で指摘)。

なお、「医療産業」(医療サービスと医薬品・医療機器等の合計)の拡大は、閣議決定「新成長戦略」(2010年6月)も認めているように、本来は日本の内需拡大と経済成長に貢献します。しかし、医薬品・医療機器および民間医療保険の市場で外国資本の比重がさらに拡大すると、それら企業の利益はほとんど国内で環流することなく外国に流出するため、内需拡大効果は減殺されてしまいます。

韓国でのFTAと日本のTPPをめぐる状況の違い

私は、米韓FTAはTPPを考える上で、非常に参考になると思っています。しかし、韓国のFTAをめぐる状況と日本のTPPをめぐる状況は、次の2つの点で大きく異なることを見落とすべきではありません。第1は、韓国ではFTA交渉妥結までその内容はほとんど国民に知らされず、政府も一貫して教育と医療部門の開放はないと断言していたことです。日本でも、政府は当初同様な表明をしていましたが、野党や日本医師会等の鋭い追及により、2011年11月以降、政府・首相もTPPが医療に影響する可能性があることを公式に認めるようになりました。その結果、当初TPP賛成一辺倒だった全国紙の論調にも、部分的に変化が生まれました。

第2の違いは、韓国では政府がFTA交渉に入ることを決めた後も、農協、医師会を含めて大半の団体がTPPに対して反対の声をあげなかったのと異なり、日本では、2011年11月11日に首相がTPP交渉参加を表明する前から、農協だけでなく、医師会、消費者団体、さらには多くの地方自治体も反対声明を出し、しかも各団体の共闘が各地で生まれていることです。このようなTPP反対運動の高揚が今後も持続した場合には、TPPの妥結内容は、少なくとも医療・医薬品分野に関しては、アメリカが求める水準より相当抑制的なものになる可能性があります。

2.TPP参加をめぐる医療界・政党等の最新の動き

次に、日本におけるTPP参加をめぐる医療界・政党等の最新の動きを紹介します。これにより、日本のTPP参加は決して既定の事実ではないと言えます。

日本医師会がTPP全面反対の見解

日本の医療界の動きで特記すべきことは、日本医師会が2012年3月にTPPそのものへの参加反対の「見解」を表明したことです。実は日本医師会は、2011年までは、政府に対してTPPにおいて日本の公的医療保険制度(国民皆保険制度)を除外することを明言するよう求める一方、TPP参加そのものについては態度を表明していませんでした。しかし、この「見解」では、「米国の要求、米韓FTA等の事例、TPP参加国の識者による意見等を踏まえ、日本医師会は、日本のTPP参加について全面的に反対する」と表明しました。

さらに、この「見解」では、「政府は、TPP参加によって公的医療保険が揺らいでも、すべての国民が加入してさえいれば『国民皆保険である』と主張する可能性がある」として、「日本医師会が考える『国民皆保険』の重要課題」を3点示しました:①公的な医療給付範囲を将来にわたって維持すること、②混合診療を全面解禁しないこと、③営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させないこと。私はこれは大変見識があると思います。

他の医療団体(専門職団体、病院団体等)も、TPP参加反対でほぼ歩調を揃えています。その結果、地方レベルでは、医師会・医療団体と農業協同組合等とのTPP参加反対の共同闘争が拡がっています。

言うまでもなく、主要経済団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)は、TPPへの早期参加を主張しています。ただし、意外なことに、医薬品産業の業界団体は、内部で意見が分かれ、TPP参加への賛成表明はしていません。まず日本製薬団体連合会(日薬連。大手・中小の全国の製薬団体および地方別の製薬団体の連合組織)は、総論で「特許、知的財産権に関連する事項については関心・危惧を持ちつつ動向を注視している」と中立的見解を述べつつ、個別意見では、限りなく反対に近い「懸念」を列挙しています(内閣府「TPPに関する意見とりまとめ」本年7月19日現在)。日本製薬工業協会(製薬協。外国資本を含む大手70社が加盟。上記日本製薬団体連合会にも加入)も、TPPについての公式見解は出していません。それに対して、日本医療機器産業連合会は、「TPP交渉参加を基本的に前向きに捉えている」と意見表明しています。

民主党、自民党ともTPP参加には慎重

政党レベルでみると、意外なことに、与党の民主党も、党としてはTPP参加賛成の公式決定はしておらず、逆に民主党TPPプロジェクトチームは本年9月に、国民皆保険制度が実質的、結果的に損なわれる内容を含む協定は認めないとの見解をまとめました。

最大野党の自民党は12月16日投開票の衆議院議員選挙で政権に復帰することが濃厚ですが、やはりTPP参加には慎重で、本年3月に「政府が『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」、「国民皆保険制度を守る」、「食の安全安心の基準を守る」、「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」等を柱とする「TPPについての考え方」を発表しています。ただし、自民党内にはTPP賛成勢力もおり、米(コメ)を関税撤廃の例外扱いにすることができれば、TPP参加に転じる可能性もあると言われています。

それ以外の政党で、公式にTPP参加を支持しているのは、新自由主義的改革を主張している「みんなの党」と「日本維新の会」だけです。「近いうち」に予定されている衆議院議員選挙で、これらの政党が躍進し、両党が自由民主党と連立政権を形成した場合には、日本のTPP参加が加速する可能性があります。

おわりに

最後に強調したいことは、日本のTPP参加だけでなく、TPPの発足そのものさえ既定の事実ではなく、今後空中分解する可能性もあることです。

よく知られているように、当初の計画ではTPPは本年中に正式に発足予定でした。しかし加盟予定国の交渉が難航していることに加え、アメリカ国内でも自動車業界(企業と組合の両方)等のTPP反対論が根強く、正式発足は来年に先延ばしされました。

それだけでなく、最近では、TPP推進派の側からも、TPP発足への悲観論が発表されるようになっています。例えば、イギリスのThe Economist誌は9月22日号に、"Another ambitious trade agreement gets bogged down"(別の野心的な貿易協定[TPP]は泥沼にはまった)との悲観的論評を掲載しました。アメリカの外交・国際政策に大きな影響力のある『フォーリン・アフェアズ』誌7月号はTPPを特集したのですが、バーナード・ゴードン「何がTPPの進展を阻んでいるのか」は、何度も「TPP交渉は決裂する恐れがある」と指摘しました。

私がここで思い出すのは、1993年のウルグアイ・ラウンドで「サービス貿易自由化」が「原則合意」されたものの、その後WTO(世界貿易機関)での具体化協議は難航し、2008年以降は「死に体」になっていることです。TPPがこれの繰り返しになる可能性は決して小さくないと私は判断しています。TPPが発足するとしても、当初予定より大幅に遅れ、しかも米韓FTAに比べ、合意水準は低くなる可能性が大きいと思います。

[本稿は、2012年11月17日に韓国・延世大学で開催された「第7回日韓定期シンポジウム」(延世大学と日本福祉大学共催)での報告です。報告前半の「TPP参加が日本医療に与える影響-私の分析と将来予測」は拙著『TPPと医療の産業化』(勁草書房)第1章第1~3節の要約です。]

【校正時補足】野田首相が突然TPP推進方針

野田佳彦首相は、TPPについては今年に入って沈黙を守ってきましたが、11月10日、突然、衆議院議員選挙(総選挙)のマニフェストにTPPの推進方針を明記する考えを表明しました。この発言に対しては主要閣僚から賛意が表明される一方、慎重派の議員は猛反発しており、今後の事態は不透明です。

私は、野田首相の突然の表明には3つの理由・思惑があると判断しています。第1のそして最大の理由は、尖閣諸島の領有権問題を契機にして緊張が高まっている中国と対峙するために日米同盟の強化をする必要があり、それのいわば見返りとして、再選を決めたばかりのオバマ大統領が強く求めている日本のTPP参加を決断する必要があると判断したことです。

第2は、TPP参加を総選挙の新たな争点とすることにより、「TPPについては「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」方針の自由民主党と差別化できるからです。TPP参加は財界も強く求めており、これにより最近目立つ財界の民主党政権離れと自民党支持への回帰を食いとめることも可能です。第3は、「TPP解散」により、消費税率引き上げを総選挙の争点から外せるからです。

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3.最近発表された興味ある医療経済・政策学関連の英語論文

(通算84回.2012年分その9:5論文。1論文のみ2011年)

「論文名の邦訳」(筆頭著者名:論文名.雑誌名 巻(号):開始ページ-終了ページ,発行年)[論文の性格]論文のサワリ(要旨の抄訳±α)の順。論文名の邦訳中の[ ]は私の補足。

○人々はどこで死んでいるのか?公刊または入手可能な統計を用いた、45報告[36の国と地域]における病院と老人入所施設での死亡割合の国際比較
(Broad JB, et al: Where do people die? An international comparison of the percentage of deaths occurring in hospital and residential aged care settings in 45 populations, using published and available statistics. International Journal of Public Health, 2012 August 15 (Published online))[国際比較研究]

死亡場所、特に病院と老人入所施設での死亡割合、の国際比較はほとんど行われていない。そこでMedLine等の各種データベースや各国の公式統計ウェブサイト等から、公刊または入手可能な2001~2010年の死亡場所データを収集し、横断的国際比較を行った。その結果、45報告(36の国と地域)から1600万人分の死亡場所についてのデータが得られた。全死亡の死亡場所が含まれた40報告では、病院での死亡割合の中央値は54%であった。ただし、この割合は日本の78%から中国の20%まで差が大きかった。「その他」(自宅を含む)の場所での死亡割合が15~20%の国は5か国あった(オーストラリア、アイスランド、日本、マルタ、ノルウェイ)。老人入所施設での死亡割合のデータが得られた21報告では、中央値は18%であった(病院死の割合の中央値は54%)。この割合は死亡年齢が高いほど高く、女では男より40%高かった。

二木コメント-世界最大の調査だそうで、死亡場所の国際比較の第一級資料と思います(執筆者は全員ニュージーランド・オークランド大学所属)。「その他」は大半が自宅と思いますが、内訳は示されていません。なお、この論文の"population"は人口ではなく「報告」(report)を意味しますが、このような用法があることは初めて知りました。

○[アメリカにおける]心血管系[疾患]死亡率減少に対する予防と治療の寄与:40年間の論争の教訓
(Jones DS, et al: The contributions of prevention and treatment to the decline in cardiovascular mortality: Lessons from a forty-year debate. Health Affairs 31(10):2250-2258,2012)[総説]

アメリカの冠動脈性心疾患死亡率は1960年代中頃のピーク時に比べて60%も低下した。循環器病専門医と疫学者はこの減少の主因が、リスクファクターのコントロールの改善(喫煙や脂肪分摂取を減らすためのライフスタイルへの介入を含む)か、医学的介入(徐細動器やスタチン等の薬物を含む)かで論争を続けてきた。この論争を解決し、医療政策に貢献するために、洗練されたデータセットや心血管死亡率モデル作成の技法が開発されてきたが、まだ医療政策のための明確な基準を示すには至っていない。死亡率低下の原因についての論争の歴史を分析することにより、医学的戦略と公衆衛生的戦略間の緊張についての価値ある政策的教訓、「疾病予防」の意味の変化、および医療政策に貢献する根拠に基づく研究とモデルの役割が分かる。医療政策担当者は疫学的モデルと自身の意志決定プロセスの「ブラックボックス」について学ばねばならない。

二木コメント-この要旨はやや思弁的ですが、本文は、40年間の論争とその背景、および主要モデル・シミュレーションについて簡潔に紹介しています。予防と治療の両方が重要な役割を果たしたとの結論も妥当であり、このテーマに興味のある方は必読と思います。この論文、および次に紹介する論文を読むと、モデルや用いる変数が違うと、推計結果は大きく変わることがよく分かります。なお、本論文でも詳しく紹介されているIMPACTモデルを用いた最新論文「アメリカにおける1980~2000年の冠動脈疾患死亡減少の説明」は、本「ニューズレター」40号(2007年12月)で紹介しました(Ford ES, et al: Explainng the decrease in U.S. deaths from coronary disease, 1980-2000. New England Journal of Medicine 356(23):2388-2398,2007。本論文の引用文献23)。

○心血管系疾患死亡率低下における予防対治療の[寄与率]割合:公衆衛生対臨床医学
(Ford ES, et al: Proportion of the decline in cardiovascular mortality disease due to prevention versus treatment: Public health versus clinical care. In: The Annual Review of Public Health 32:5-22,2011)[文献レビュー]

冠動脈性心疾患(CHD)の死亡率は多くの国で20世紀中頃まで増加したが、1960年代からいくつかの国では低下し始めた。当初出されたこの趨勢の信憑性に対する疑問は消え、研究者はこの事実を説明するために、さまざまな技法の使用を試みた。それらには、CHDのリスクファクターの趨勢やCHD治療法の変化についてのエコロジカルな検証(ecological examinations)、リスクの多変量解析、洗練されたさまざまなモデリング技法が含まれる。リスクファクターの改善と心疾患治療の両方がCHD死亡率低下に寄与した。諸研究を総合すると、リスクファクターの変化がCHD死亡率低下の44~76%を、治療の変化が23~47%を説明できると言えるかもしれない。ただし、両者の寄与率は国によって異なっている。これらの推計で用いられた諸モデルはCHD死亡率のさらなる大幅低下は、人口全体のリスクファクター分布の改善によっても、根拠に基づく治療を受ける患者割合を増やすことによっても、実現できることを示唆している。

二木コメント-この分野の研究の最高権威であるFord氏等による、最新かつ最も包括的な文献レビューで、アメリカとそれ以外の国の代表的実証研究をていねいにレビューしています(上記Jones論文の引用文献26)。ただし、本文の最後で、「経済的評価は、一次予防は個人レベルでは費用効果的であり、人口全体では費用を抑制する可能性があることを示唆している」と書いているのはフライングです(本文では、経済的評価についてはほとんど述べていないため)。

○革新的医薬品のドイツとフランスの2001-2007年の余命延長への寄与
(Lichtenberg FR: Contribution of pharmaceutical Innovation to longevity growth in Germany and France, 2001-7. PharmacoEconomics 30(3):197-211,2012)[量的研究]

本研究の目的は、革新的医薬品がドイツとフランスの最近の余命延長にどの程度寄与しているかを定量的に明らかにすることである。そのために、まずドイツの2001~2007年の州別縦断的データを用いて、各州の各年の余命および年齢調整済み死亡率を被説明変数、各州で消費された処方薬の米国FDAでの平均承認年や他の変数(人口当たりCTスキャナー数、1人当たりGDP、失業率等11変数)を説明変数とする線形重回帰分析を行った。その結果、この期間のドイツの平均余命の延長1.4年の約三分の一は既存薬の新薬による代替により生じたとの結果が得られた。同様の方法で、フランスにおける、抗癌剤の平均承認年が2002-2006年の年齢調整済み癌死亡率に与える影響を計算し、革新的抗癌剤は癌死亡率低下の最低でも六分の一、最大では二分の一を説明できるとの結果が得られた。

二木コメント-新古典派成長理論に基づけば、経済成長の源泉は技術進歩であり、技術進歩は新製品に体現されるから、新薬の割合の高さは平均余命等の延長にも寄与しているはずだとのいわば三段論法に基づいて、大胆または「ナイーブ」な経済モデルを作成した計量経済学的研究です。私の経験では、医薬経済学研究は新薬の効果を過大評価する傾向があります。

○アメリカは医療により回避可能な死亡の改善面でヨーロッパ3か国に遅れをとっている
(Nolte E, et al: In amenable mortality - deaths avoidable through health care - progress in the US lags that of three European countries. Health Affairs 31(9):2114-2122,2012[国際比較研究]

アメリカと、フランス、ドイツ、イギリスの1999-2007年の74歳未満人口の回避可能な死亡(タイムリーで効果的な医療があれば生じなくてもよい死亡)の趨勢とパターンを比較した。回避可能な死は、特定の小児感染症、治療可能な癌、糖尿病、脳血管疾患と高血圧、一般的な手術合併症による死亡のすべて、および虚血性心疾患による死亡の50%とした。この期間のアメリカの65歳未満人口では、ヨーロッパ3か国と逆に、回避可能死亡率は上昇していた。アメリカの65~74歳人口ではそれは低下していたが、ヨーロッパ3か国に比べると、改善幅は小さかった。全年令の男では回避可能死亡率は、アメリカでは18.5%低下したが、イギリスでは36.9%も低下した。女では、それぞれ17.5%、31.9%であった。治療可能な癌に限定すると、アメリカの男女の死亡率は4か国でもっとも低かったが、循環器疾患(脳血管疾患と高血圧)による死亡が回避可能な死亡の中心であり、これはアメリカで一番高かった。この結果は、すべてのアメリカ人がタイムリーで効果的な医療を受けられるような改革の大義を支持している。

二木コメント-本「ニューズレター」95号(2012年6月)で批判的に紹介した、アメリカの高額な癌医療を正当化した論文(「アメリカの医療費のヨーロッパに比べた高さは癌医療では価値があるかについての分析」Philipson T, et al: An analysis of whether higher health care spending in the United States versus Europe is "worth it" in the case of cancer. Health Affairs 31(4):667-675,2012)が、いかに一面的であるかがよく分かります。ただし、癌医療に限定すれば、アメリカの成績はヨーロッパよりも良いことは確かなようです。


4.私の好きな名言・警句の紹介(その96)-最近知った名言・警句

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